著者 : 大石大
小江戸川越の街にひっそりと佇む「Memory」は“記憶を消してくれる”カフェ。不思議な力を持つ家入蘭のもとに、過去の失恋やトラウマに苦しむ人々が、今日も引き寄せられるようにやってくる。最愛の人に先立たれ生きる気力をなくした坂下麻季は、自分のことは忘れてほしいという亡き恋人の遺志により、Memoryを訪れた。記憶が完全に消去されるまでの間、川越の街をぶらつく麻季。そこに死んだはずの恋人が現れて…。麻季の最後のデートを描いた「あなたに似た人」や、表題作「いいえ私は幻の女」のほか、驚きと感動せまる追憶の物語集。
小六の息子・颯太の授業参観で母校を訪れた新城幹太。学校での颯太は家とは別人のように活発で、幹太は動揺する。三十年前、自分がこのK小学校に転校してきた際に遭遇した奇妙な出来事を思い出したからだー「シェルター」。M小に異動してきた庄内真奈は、給与明細に「危険業務手当」として三十万円の支給が記載されていることに気づく。「危険業務」に思い当たるふしはなく同僚に聞いてみると、三年二組の誰かが「手のかかる」児童だとわかりー「危険業務手当」。保護者、教員、事務職員、PTA、校長ー学校に集う大人たちに起きた、子どもが知らない5つの奇談。
東北の寂れた街に、1ヶ月、欠かさずお参りすると、30日目の夜、この世のものとは思えない快楽のなかで死を迎えることができる神社があるという。それを体験した男の日記がネットで拡散され、その神社は話題に。死にたい人たちが、その街に集まり、街は活気を取り戻すが…。死にたい人たちの事情と街を蘇らせたい人たちの思いが交差する連作短編集。
31歳、独身の大谷綾はデート相手と大喧嘩した帰り道、馴染みのバーに足を運ぶ。そこでママのみひろと過去の失恋について話していると、カウンターの隅で飲む初老の男性から声を掛けられる。“センセイ”とみひろが呼ぶその男性は、フラれた当時の綾の行動や相手男性の言動から「失恋したのには別の理由がある」と語り出す。自分が思い込んでいた「フラれた理由」と「失恋の真相」。恋する男女が陥る“スレ違い”を当時の流行や社会情勢を交えて描いた傑作ミステリー。
社会学部一人気のない“上庭ゼミ”に入った松岡えみるは、上庭先生の学生相談室の補佐をすることに。サークル内の友人関係に悩んでいるえみるは、学生たちの人間関係の悩みに親身に耳を傾ける。上庭先生は評判とは違い社会学の知識をもって思いもよらぬ解釈をみせ、えみるはすっかり社会学の虜になるがー?!コミュ障で根暗な社会心理学講師と、おひとよしで責任感の強い女子大生コンビによる、人生相談室、開幕!