著者 : 天津佳之
神剣なきまま即位した“すめらぎ”の秘めたる想いーー。 小さき者が小さきままに集い、大輪の花となる。日の本をそんな国としたい。 菊を愛した後鳥羽院と刀鍛冶たちとの絆を描く、心震える連作短篇集。 新たなる神剣を作るべく、後鳥羽院によって各地から集められた、則宗、延房、久国ら刀鍛冶(御番鍛冶)。共に剣を鍛えていくことで、 “すめらぎ”たらんとする院の想いを知った彼らは、それに応えようとするのだが……。 承久の乱を起こして鎌倉幕府に破れ、この国の政を武家のものにしてしまった「暗君」とされる後鳥羽院の真の姿に、刀鍛冶たちの視点から迫った歴史小説。 『利生の人 尊氏と正成』で第12回日経小説大賞を受賞し、『あるじなしとて』で第12回日本歴史時代作家協会賞の候補となった著者渾身の最新作。
文人として名を成し、順調に出世していた菅原道真は、讃岐守という意に反した除目を受け、八八六年(仁和二年)、自暴自棄となりながら海を渡って任国へ向かう。しかし、都にいては見えてこなかった律令体制の崩壊を悟った道真は、この地を“浄土”にしようと治水を行なった空海の想いを知ると共に、郡司の家の出でありながらその立場を捨てた男と出会うことで、真の政治家への道を歩み出すー。“学問の神様”ではなく“政治家”としての菅原道真に光を当てた第12回日経小説大賞受賞作家による、感動の歴史長編。
今から1400年前、女性天皇が初めて即位した。聖徳太子を摂政に、十七条の憲法を制定、豪族たちの対立を調停して国をまとめ上げ、大国・中国とは、対等の国として相対した。この国の精神のなりたちに迫る歴史小説。
時は鎌倉末期。討幕の動きが発覚し後醍醐天皇は隠岐に流されるが、幕政への不満から、治世の主体を朝廷に取り返すという近臣たちの討幕運動は幕府にも広がっていく。重職にあった足利高氏(尊氏)が、帝方の楠木正成に呼応するように寝返り、鎌倉幕府は滅亡。後醍醐帝が京に戻り、建武の新政がはじまる。しかし、武家も公家も私利私欲がうごめく腐敗した政治は変わらず、帝の志を実現しようと心をひとつにする尊氏と正成の運命は、陰謀に翻弄され、引き裂かれていく。第12回日経小説大賞受賞作。