著者 : 安曇潤平
すれ違う登山者に挨拶するたび、返ってくる奇妙な反応に不安を覚えた矢先、ある男の指摘に戦慄する「命の影」。友人と歩く山道で見かける人影の異様さに気づいた瞬間、恐怖に襲われる「ついてくる女」。気さくな女将が饒舌に語る息子の様子と、滞在中姿を見なかった少年からの葉書に震撼する「ぼくちゃん」など16篇。先の見えぬ濃霧、藪に隠れた谷、雪山の足跡ー死と隣り合わせの山の怪異を畏怖とともに描く、山岳怪談の決定版。
木陰に立ち並ぶ数十体の地蔵の、ある法則に気づいた瞬間に戦慄する「顔なし地蔵」、風雨と霧に閉ざされたヒュッテの乾燥室にうずくまる青い雨具の男の正体が切ない「乾燥室」、奇妙なほど行く先々の山で遭遇する女性の言動が謎と不安を誘う「ポニーテールの女」他。避難小屋、山奥のトンネル、テントー心身ともに強靱な山男たちを震撼させる、恐ろしくも不可解なできごとを山の霊気とともにつづる。文庫オリジナル作品2篇を収録。
現実と地続きでありながらも、異界としての山の風景と霊気を堪能できる、山岳怪談の決定版。冬の雪山で、小さな避難小屋の静寂を破るけたたましいノックの音と叫び声。だが、その意味を理解した瞬間、恐怖が襲いかかる「雪山の叫び」。雪の大汝山で下着一枚という異様な姿で発見された男性の遭難遺体。残された手帳の最終ページに戦慄する「最後の日記」。数々の奇跡的な生還を遂げ、“俺は不死身なんだ”とうそぶく男が屏風岩の登攀後に陥った危機ー彼の本音が哀切な「不死身の男」など、山の怪異を自然の風景描写を織り交ぜながらつづる21篇を収録。
赤いヤッケを着た遭難者を救助したため遭遇した怪異、山の空き地にポツリと置かれた大きなザックから夜出てくるモノ……自らも登山を行う著者が、山で訊き集めた数々の怪談実話。新たな書き下ろし2篇収録。
冬の閉ざされた山小屋の一室で毎年起きる怪異とその顛末に戦慄する「五号室」、キノコ狩りに夢中になるうちに道に迷った男が寂れたゲレンデ跡で遭遇した恐怖を描く「リフト」、仲睦まじく登山道を歩く母娘に呼びかける父親の声の正体が切ない「呼ぶ声」等、20話を収録。山をこよなく愛し、数々の山に登り続けている著者が訊き集めた話を、臨場感たっぷりに綴る。登山者を異界へと導く、山の霊気に満ちた山岳怪談集。
すれ違う登山者と挨拶をするたびに返ってくる怪訝な表情。焦燥感に囚われはじめた矢先、謎めいた男が告げた“事実”が恐ろしい「命の影」。友人と縦走する山道をずっとついてくる女性の動きが操り人形のようで不気味な「ついてくる女」、あまりの恐ろしさに、著者が山と距離を置くきっかけとなった体験「山を這う蟻」など、厳選した16話を収録。山とその裾野で遭遇した不思議なできごとを、美しくも厳しい自然とともに活写する。
冬の閉ざされた山小屋の一室で、初夏の緑が瑞々しい登山道で、山の怪は突如として牙を剥く。遺された無念の思いが、美しさに目を奪われた人々の心の隙に入り込む。登山者を異界へと導く「山」の霊気に満ちた怪異譚。
山岳怪談実話の名手が放つ、著者自ら訊き集めた極上の山の怪異譚。自分が体験した話、山仲間から聞いた話、山麓の呑み屋で仕入れた話…。渓流釣りや山菜狩り、キノコ狩りなど、登山以外の山の達人から聞き集めた怪談も。山を愛する著者ならではの山岳描写豊かな全21編。文庫化にあたり書き下ろし「ポニーテールの女」を収録。
自らも登山を行う、怪談専門誌『幽』で活躍する著者が山で訊き集めた数々の怪談実話。真夜中の野営地、吹雪のテント…外界でありながら閉ざされた地となりうる、山という「異界」の怖さに背筋が凍る珠玉の短篇集。