著者 : 小山栄雅
坂道坂道
日常の平穏な時の流れの中に、ふと、梶井基次郎の痛ましい青春を思い、画家佐伯祐三の自殺にも等しい生きざまをパリ近郊のモランの村まで追い、また俳人山頭火の漂泊の影を旅先きで凝視し、幻の詩人逸見猶吉の閉ざされた生涯に思いをはせつつ、一方では何げない凡庸な空間へ多角的に割り込んでくる、みずからの寒々とした遠景を透視した十四の短篇。
旅の終り旅の終り
《青春》は、みずからが、たゆみなく、みずからの情熱の全量で、磨き上げつづけていかねばならぬ。その強靭な志向は、誰もが負わねばならぬ痛ましい運命とは異って、やがて人格の正直な《無垢》へと通じ合うだろう。梶井基次郎と三好達治の二人の青春は、そこにつきあおうとするものの心に、新鮮な抒情の無垢の所在を、まるで腹立たしいほどの輝やかしい狂気のように、容赦なく突きつけてくるのである…。
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