著者 : 弥生小夜子
蝶の墓標蝶の墓標
半身を覆う蘇芳色の痣と虚弱な心臓を持ちながら、同級生からの揶揄に対して苛烈なまでの矜持を示した少女・夏野。小学校時代、ほんの一瞬だけ彼女と交流を持った瑞葉は、高校生となって再会したとき、さなぎから蝶に羽化したような夏野に魅了された。数年前に奇妙な自殺を遂げたかつての同級生の死を調査するなかで、二人は距離を縮めていく。自殺した少年・要は夏野の痣の絵を描いたという理由でいじめを受け、それを苦に死を選んだと思われていた。彼を罰するかのように、要の死体は肌の半分を赤い絵の具で痣のように汚されていたー
風よ僕らの前髪を風よ僕らの前髪を
早朝、犬の散歩に出かけた公園で、元弁護士の伯父が何者かに首を絞められて殺害された。犯人逮捕の手がかりすら浮かばない中、甥であり探偵事務所勤務の経験を持つ若林悠紀は、養子の志史を疑う伯母の高子から、事件について調べてほしいと懇願される。悠紀にとって志史は親戚というだけでなく、家庭教師の教え子でもあった。中学生の頃から他人を決して近づけず、完璧な優等生としてふるまい続けた志史の周辺を調べるうちに、悠紀は愛憎が渦巻く異様な人間関係の深淵を覗くことになる。圧倒的な筆力で選考委員を感嘆させた第30回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。
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