著者 : 松尾清貴
曲者たちに襲撃された里見義実を救ったのは、なんと犬江親兵衛だった! 親兵衛は、四歳の頃に神隠しにあってから、富山の洞穴で、伏姫の神霊に養われていたのだ。今では立派な若者に成長していた。洞穴には、荒芽山で死んだはずの姨雪与四郎とその妻音音、行方知れずになっていた曳手と単節も、いっしょに暮らしていた。親兵衛は、すぐさま館山城へ馬を走らせる。霊玉の力を味方につけた親兵衛は、城に囚われていた里見義通を救い出し、城主の蟇田素藤を縛り上げた。しかし素藤には、妖術をあやつる謎の比丘尼妙椿が味方していた。妙椿の力を借りて、素藤は処刑を免れ、再び城を奪還しようと企てる。一方、親兵衛は、浜路姫との不義を疑われ、里見家から遠ざけられてしまう。 素藤の野望のゆくえは? 妙椿の正体は? 親兵衛の運命は? そして、物語はついに八犬士の集結へと向かう。
越後国小千谷で、犬田小文吾はなぜか目が見えなくなり、旅籠屋に長逗留していた。そこへ瞽女に扮してやってきたのは、あの船虫ーーかつて小文吾に夫を殺された因縁のある女だった。今では、盗賊の妻になり、悪事を働いていた。船虫は小文吾に刃を向けたが、逆に捕らえられ、荒堂に吊るされた。そこへ通りがかった犬川荘助。船虫の芝居にだまされ、盗賊の隠れ家へついていった。そこで密談を漏れ聞き、小文吾のもとに夜討ちに押しかけた盗賊たちを、みごとに絡め取った。ところが小文吾と荘助は、盗賊退治を褒められるはずの領主の館で、かつての刑場破りの罪を咎められ、打ち首が決まってしまった! 一方、江戸では犬村大角と犬飼現八もまた、思わぬことから盗人と誤解され、囚われてしまう。次々と窮地に立つ犬士たちを救う術は……? 犬士たちの不思議な巡り会いと、波乱に富んだ冒険を描く、歴史エンターテイメント第4弾!
ささやかな幸せなど、浦から離れられん跡取りたちにくれてやれ。宝暦十三年(一七六三)、周防国の小さな海村で、二人は出会った。廻船屋敷の二男坊と、網元の末っ子ー長男が家を継ぐと決まっていたその村で、跡取り以外は皆「厄介」と呼ばれた。日本初の巨大沈船引き揚げに挑んだ男の生涯ー。
荒芽山で巡り合った五人の犬士は、隠れ家を襲撃され、散り散りになる。 犬田小文吾はひとりになった道中、船虫という悪女のせいであらぬ嫌疑をかけられ、幽囚の身になってしまう。しかし、旦開野という美しい女田楽師の手助けで、脱出に成功した。旦開野の正体は、犬士のひとり犬阪毛野だった! 現八もひとり旅の途中、庚申山で化け猫に出くわし、その目を射抜く。この化け猫、郷士になりすまして麓の村に住み着き、その息子夫婦を虐げていた。この息子が、犬士のひとり犬村大角だった! 信乃は逗留先で、浜路という、死んだ許嫁と同じ名をもつ娘と、不思議な巡り会いをする。やがて明かされる、その娘の正体は・・・。 江戸時代に生まれた名作を、そのストーリーを忠実に再現しながら、読みやすく小説化したシリーズ第3弾。
芳流閣の屋上から墜落した犬塚信乃と犬飼見八は、江戸湾をのぞむ行徳村に流れ着いた。そこで力自慢の大男、犬田小文吾との運命的な出会いが待っていた。信乃は孝、見八は信、小文吾は悌の珠をもち、いずれも牡丹の痣がある。三人は義兄弟の契りを交わす。罪人として追われる信乃を、我が家に匿う小文吾のもとに、相撲に負けた恨みを抱く山林房八が押し掛けてきた。窮地に立たされる小文吾。しかし、信乃を逃がすための、思いがけない秘策があった! 犬士たちの活躍と、その陰に隠された、犬士になれなかった者たちの思いが描かれる。 江戸時代に生まれた歴史エンターテイメントを、小説化したシリーズ第2弾。
時は室町時代ー戦乱のなかで頭角をあらわした里見義実は、安房国の領主になった。しかし、城攻めの窮地に追い込まれたとき飼犬の八房にむけた一言が禍となって、娘の伏姫の身にふりかかる。伏姫の数奇な運命と、そこから生まれた八犬士たちの物語がはじまる…
関ヶ原合戦から十四年ー。世に天下の智将と謳われた真田幸村は、かつての名望とは裏腹に素顔は凡庸で、豊臣家からの挙兵の誘いも重荷でしかない。そんな偽りの名将に、抜け忍の猿飛佐助がとんでもない企てを持ちかけた。「おいらが策を授けて、あんたをホンモノにしてやる。真田幸村の名と命、おいらに担がせちゃあくれねえかい?」“幸村に仕える無双の家来衆、真田十勇士”の評判は広まり、いよいよ真田丸の死闘の火ぶたが切られる。-狙うは家康の首!戦国気風が残る世を、十人の勇士が暴れまわる大興奮エンタテインメント。“新・真田小説”の決定版!
大正十四年十月、「私」の祖父が住む秩父郡峰伊那村でダムが決壊、「波多野岬」という名の少女が犠牲になった。翌年私は、祖父の家の納屋で、祖父に宛てられた少女の手紙を三通見つける。最初の一通には未来・過去・現在を定義する「クラウス曲線理論」なる小文が綴られており、別の一通にはダムの底に「答え」があると書かれていた。少女の死にこだわった私は、少女と同じ名を持つ「間中岬」とともにダムへと向かう。すべての「語り」は「騙り」に過ぎないのか?驚きの結末を用意するミステリ表題作と、近代文学の香り漂う青春小説「簡単な生活」の二編を収録。
「五二物(質草)」に紛れ込んだ幻の宝石ーシン、ヒロ、ケイタの三人は、その石があるという高級質店「K」に忍び込み、一儲けしようと企む。だが、その質屋のオーナーは、違法薬物を常用し、また、たびたび暴力事件を起こすなどヤクザ顔負けの危険人物だ。一方、五年前、違法薬物の過剰摂取で娘を亡くした刑事の君島総一郎は、睡眠薬自殺として「処理」された事件の真相を、県警本部の木戸誠とともに執拗に探っていた。その途上、「K」にたどり着く。シリーズ60万部突破『偏差値70の野球部』の著者による、ノンストップ犯罪ノベル!書き下ろし映画化原作。
帝国陸軍から秘密組織・水曜会に召喚された日下伸之博士は、中佐・月島寿三郎の出迎えを受ける。会食の席から月島は、天皇の万世一系を脅かす不穏な発言を始め、大衆支配の新たな方法を提示する。半世紀以上後、都内を流れる河川から異常死体が次々に上がる。どれも腹部を裂かれ、内蔵を抜かれた後に再び縫合され、遺棄されていた。被害者の共通点はHIV陽性。だがキャリア刑事・代峰サチは、二つ目の共通点に気付いていた。矢先、五番目の現場で唯一の物的証拠を見付けたサチの後輩・砧マリコが失踪する。過剰な情報がもたらす現代の空無を描く驚異のミステリ。
あるもンしかねエんだ。進歩も進化も関係ねエのよ。エレベーターはなくても階段はあった。階段があっても梯子はあった。それもなければ二階屋がねエよ。そう言うことだ、わかるか?人類の進歩じゃアねエのさ。飛行船ってのがいっとき流行ったなァ。空を飛んだらどうだッて言うんだ。飛ばなくたッて人間は生きていける。それがあるのはどうしてだ。理由なんてねエよ。ただあるのさ。なくていいものでもあるからあるんだ。だから大事なのは、それをだれが造っただとか人間の業だ叡智だかが素晴らしいとか、そんなことじゃアねエ。そこにあるそれはなんなのか、ッてことだ。ないものをあるように見せかけるのは馬鹿げてやがる。だがあるものをねエッていうのはもっと馬鹿げてる。わかるか?(本文より)。超新星登場!驚愕仰天のデビュー作。