著者 : 榎本憲男
本当の近未来の話をしようか。新自由主義台頭の果てに世界は統一され、人類は自由と平等と平和を手に入れた。宗教も、国境もない。争いも存在しない。だが、完全な理想社会は、人間同士をつなぐ《ある力》を奪っていったーー。SF×パンク×世界史の構造=25年後の未来をキッチュに予言するエンターテインメント巨編 * * * * *覇権争いに終止符を打ったアメリカと中国は、完全なる自由と平等と平和を保障する《大同世界》を実現させた。大統一した世界を維持する分散型自律機関=通称《DAI》なる権力装置のもと、国境も、宗教もない理想の社会に人々は安住する一方で、見えない分断が隠蔽されているのではないかという陰謀論が囁かれ、原因不明の自殺者が後を絶つこともなかった。パンクバンドの元ギタリスト・ケイは、ある出来事をきっかけに音楽活動から足を洗い、現在は秩序維持軍に属している。2050年の近未来世界に戦争は存在しない。だが軍は同時多発する小さなコミュニティの儀式に対して、それらが宗教行為にあたるか見極める調査活動を続けていた。信仰の兆しを見せる《故障》した地域が世界各地で発生するなか、対象ゾーンへの《警告・修理・漂白》を遂行する任務にあたっていたケイは、上長のグエンから日本州西部でパンクロック・フェスティバルを開催する《アガラ》なる土地に潜入捜査せよとの指令を受けるのだった。『エアー3.0』の著者による最新の世界情勢とPUNKへの愛に裏打ちされた思索的フィクション
劣化した資本主義をバージョンアップせよ! 「荒唐無稽な話ではない。18世紀の英仏で同様のマネー創出が行われている。世界経済をどう立て直すか、お金とは何か。二つを同時に考えさせてくれる画期的エンターテイメントだ」 経済アナリスト・森永卓郎氏も激賞の一気読み経済エンタメ小説! 市場の空気までも読み取り、莫大なマネーを生み出す人工知能「エアー」。世界の金融市場で独り勝ちするエアーのマネーを資金に、中谷祐貴率いる財団法人「まほろば」は、福島の帰還困難区域に同名の特別自治区を建設する。 中谷たちは稼いだマネーをデジタル通貨「カンロ」に変えると、「まほろば自治区」で還流させ始める。そして、成長が鈍化する日本各地にまほろば自治区を出現させ、国外にもカンロ経済圏を開拓し始める。 政府の高級官僚からまほろばに転籍した市川みどりと福田義雄は、密かにエアーの未来に危惧を抱いていた。ひとつにはカンロ経済圏の開拓が性急すぎるから。もうひとつには、エアーの認証権が与えられているのは、中谷1人であるからだ。 そんなとき、中谷は「資本主義をやり直す」という言葉を残し、単身、日本を後にする。舞台はカナダ、中国、そしてロシアへ。中谷の目的とはーー? 【編集担当からのおすすめ情報】 前作『サイケデリック・マウンテン』が、第1回「ミステリー通書店員が選ぶ 大人の推理小説大賞」(文藝春秋「オール讀物」主催)候補作に選ばれた榎本憲男氏の最新作。 好評を博した「エアー2.0」を、さらにスケールアップ。 経済アナリスト森永卓郎氏も激賞する、一気読み必至の経済エンタテイメント小説です。
国際的な投資家・鷹栖祐二を刺殺した容疑者は、新興宗教「一真行」の元信者だった。マインドコントロールが疑われ、NCSC(国家総合安全保障委員会)兵器研究開発セクションの井澗紗理奈と、テロ対策セクションの弓削啓史は、心理学者の山咲岳志のもとへ。
新元号「令和」最初の総選挙投票日ーー。出世拒否、バツイチ、オーディオ狂で50代ながら捜査一課ヒラ刑事の真行寺巡査長は、その夜、新大久保で焼肉屋の喧噪の中にいた。選挙速報によると、首相の名を冠した金融緩和政策を批判し立ち上げられた新党が、予想以上に議席を獲得しつつあるという。新党支持派の若者たちが盛り上がっていると、店内に怒声が響く。「令和令和とはしゃぎやがって!」。常のごとく巻き込まれる真行寺だが、このときはまだ、自らが日本経済の裏を覗き見るハメになるとは知る由もなかった……。 圧倒的なスケールに「真行寺マニア」激増中のハマる警察小説シリーズ、待望の第4弾!
元モデルで聾唖だという17歳の少女・麻倉瞳が誘拐された。彼女の母親は、評論家デボラ・ヨハンソンの秘書を務めているだけでなく、レズビアンであるデボラのパートナーでもあった。母娘とデボラは同居しており、瞳はデボラのことを「ママ」と呼んでいる。 誘拐犯の要求は、フェミニズムの論客であるデボラに対し「これまでの主張がすべて間違いであったと認め、今後一切の活動を停止しろ」というものであった。出世を拒否し、53歳で警視庁捜査一課のヒラ刑事である真行寺弘道巡査長は、元捜査一課の刑事で現在は杉並署に異動している同期の四竈とともに、捜査を始めるがーー。 「このミステリーがすごい! 2019年版」(宝島社刊)で評論家や翻訳家に注目されたニュータイプの警察小説シリーズ、待望の第3弾!
五十三歳の真行寺弘道は、「巡査長」という肩書きが警視庁捜査一課で異例なだけでなく、きっちり公休を取り自宅のオーディオでロックを聴くのが楽しみという、刑事としてはかなりの変わり種。捜査の「お約束」である所轄刑事との相勤を避けて単独行動するなど、型破りな行動・言動で知られている。 そしてこのベテラン刑事、ヒラなのに、やけにデカい事件に当たる。 元警察官僚の尾関一郎衆院議員変死事件に続くヤマは、インド人変死事件。荒川沿いを流していた真行寺は、捜査員たちに出くわす。河川敷で死体が発見されたという。やがてこの死体はインド人男性のものであることが判明。死体の耳の周囲に残る火傷に着目し、事件性を感じた真行寺は、インドを専門とする若き研究者・時任の協力を得て真相に迫るがーー。 シリーズ第一巻『巡査長 真行寺弘道』が、読売新聞、しんぶん赤旗、産経新聞、「小説推理」など各紙誌で絶賛された、圧倒的なスケールの痛快エンターテインメント第二弾!
五十三歳の真行寺弘道は、「巡査長」という肩書きが警視庁捜査一課で異例なだけでなく、きっちり公休を取り自宅のオーディオでロックを聴くのが楽しみという、刑事としてはかなりの変わり種。 捜査の「お約束」である所轄刑事との相勤を避けて単独行動するなど、型破りな行動・言動で知られている。これまた異例ながら、キャリアで捜査一課長の水野玲子警視に命じられた真行寺は、八王子の高級老人介護施設で起きた入居者死亡事件を捜査する。AI搭載の人形型介護支援ロボットが関わっているらしいその事件を調べるうちに、真行寺は、自らの職業を「ハッカー」と称するオーディオマニアの青年・黒木良平と親しくなった。同事件の捜査が一段落したところに、水野課長から連絡が入る。元警察官僚で衆院議員の尾関一郎が新宿のホテルで変死したという。捜査を進めるうちに、この事件の背後に政界・芸能界・反社会的勢力などが連なる大きな組織の存在をかぎ取った真行寺は、黒木の力を借りて真相に迫るがーー。 AIやゲノム編集など、リアルな知見に裏打ちされた痛快なエンターテインメント!〈解説〉北上次郎
あの人は資本主義をやり直そうとしている! 新国立競技場の工事現場で働く中谷は、不思議な老人と出会う。老人はいかにも肉体労働には向いておらず、仕事をクビになるが、現場を去る直前、翌日の競馬の大穴馬券を中谷に託していた。老人が姿を消した直後、工事現場では爆破事件が起こり、翌日馬券は見事的中する。 5000万円の現金を手にした中谷の前に、再び老人が現れ、彼が開発した市場予測システム「エアー」の代理人として、日本政府との交渉窓口となるよう、中谷は依頼される。 「エアー」は世の中に渦巻く人間の感情を数値化して、完璧な市場予測を可能にするシステムで、それは政府が握るビッグデータと結びつくことで、国家の予算を潤すほどの巨額な利益をもたらすものだった。 謎の老人の代理人として、政治家や官僚たちと交渉を重ねる中谷だったが、「エアー」を供与する見返りとして、福島の帰還困難区域を経済自由区として、自分たちに運営を任せるという要求を突きつけるのだった。 現代日本が直面する難題をつまびらかにし、圧倒的なスケールで描く近未来経済サスペンス小説。巻末解説は書評家の三橋暁さんです。 【編集担当からのおすすめ情報】 前半はミステリー・タッチで物語は進み、後半は未来を占うユートピア小説としても読めます。予想外の展開が次から次へとスピーディーに続き、気がついたときには壮大なスケールの物語の真っ只中にいることでしょう。新人作家にもかかわらず第18回大藪春彦賞にもノミネートされ、将来が嘱望される作家さんのひとりです。ぜひお手にとり、ページを繰ってください。一気読み必至の、至福の読書体験が待っています。
完璧な市場予測で資本主義をリセットせよ! 新国立競技場の工事現場で働く中谷は、そこで不思議な老人と出会う。老人は見るからに肉体労働には向いておらず、仕事をクビになるが、彼は大穴馬券を中谷に託していた。老人が去った直後、工事現場では爆破事件が起こり、翌日馬券は見事的中する。 多額の現金を手にした中谷の前に再び老人が姿をあらわし、彼が進める壮大な計画を手伝うよう依頼される。実は老人は感情をも計算して完璧な市場予測をはじき出す「エアー」というシステムを開発しており、高級ホテルのスイートルームでエアーを操り、瞬時に巨額の富を生み出すのだった。 老人から代理人に指名された中谷は、日本政府にエアーを提供する交渉の窓口として政治家や官僚たちと会うことになる。政府が持つ、より大きなデータをインプットすることでエアーは最強になり、市場予測は完璧なものに近づく。その力に気づいた財務省の若手官僚・福田はエアーの導入を推進するが、中谷が要求してきたのは、福島の帰還困難地域を経済自由区として、自分たちにその運営を任せよというものだった。 現代日本の難題をつまびらかにし、圧倒的なスケールで展開する、一気読み必至のネオサスペンス小説。 【編集担当からのおすすめ情報】 著者は長らく映画界に身を置き、数々の映画のプロデュースや自ら脚本を書き監督もつとめてきました。その映画づくりのなかで、ずっとあたためていた物語がこの作品です。当初、脚本として書かれ、それを自らが小説として執筆、映画的発想に支えられたスケールの大きな物語となっています。もともと文章力には確かなものがあり、文学に関しても造詣の深かった著者だけに、本作品は小説としてもスリリングで読みごたえのある作品となっています。最新の経済知識も導入し、未来の理想社会とはどんなものなのか、読む者をしてしばしそんな思索に駆らせるエンタテインメント小説です。
賢は大学で映画研究会に属している。四年生の賢が監督で映画を撮ることになり、ヒロインには同じ映画研究会の杉崎莉沙が選ばれる。莉沙も実は監督志望で、賢が書いた脚本をめぐって、ふたりは言い争いとなるが、撮影は進む。莉沙の最後のショットを残して、彼女が交通事故に遭い死んでしまい、映画は頓挫する。一年後、賢は莉沙にそっくりな女性を見かける。声をかけ話を聞くと、莉沙の双子の妹の洋子だった。賢は洋子を起用して残されたショットを撮影し、映画を完成させようとするが、一年ぶりに集まったメンバーは、そんな賢に途惑いの表情を見せるのだった。