著者 : 田村英敏
【2022年に発刊された『潮の音ーー生と死の季節、夏の海辺の町で』の改訂版です】 ー何の前触れもなく、その幻は現れたー 西伊豆の海辺の小さな町。定年を間近に控えた高校教師の邑井は、夏も終わりに差し掛かったある日、30年前に亡くなった教え子・駿一の姿を幻のように目の前に見る。希望に満ちた未来を夢見ていた駿一を襲った事故。夫を亡くし、女手一つで息子を育て上げた母。そしてそんな親子を襲ったあまりに悲しい結末ーー。自身の教員人生を振り返る傍ら、そんな忘れがたい駿一親子に切実なる思いを馳せる邑井がたどり着いた想いとは。過ぎ去った日々の記憶を手繰りながら、生と死を見つめた男の感動の物語。 [目次] 突然の来訪 父母面談 交通事故 駿一の話 美枝子 山月記 卒業式 家庭訪問 転勤 教員生活 職員会議 教員仲間 別れ 戸田再訪 海が鳴る 倭文の苧環 潮の音 著者略歴 [担当からのコメント] 本作は、ある教え子の記憶を通して、生と死を見つめる主人公の心情を克明に描くと同時に、多感な時期を生きる子供達と向き合ってきた一人の教師の軌跡を辿った物語でもあります。自身も国語科教員として教壇に立った経験を持つ著者が綴る教師と生徒の心の物語を通して、ぜひ教育の価値や本質と向き合ってみてください。 [著者略歴] 田村英敏 一九四四年(昭和19)静岡県湖西市に生まれる。 京都大学文学部卒業後、国語科教員として静岡県の県立高校に勤務。一九八五年(昭和60)から二年間、日本語講師として上海外国語学院(現上海外国語大学)に派遣される。 教え子の手ほどきで剣道を始め、現在、剣道七段。 著書に『合歓の花咲くころ』(新風舎)、『潮の音ーある鎮魂歌ー』(文芸社)、『上海余音』(文藝書房)がある。 静岡県藤枝市在住。