著者 : 穂高明
夫と義母から一方的に、理不尽な理由で別居を言い渡された真知子。その日を境に、一人息子の怜と離ればなれの生活が始まった。孤独な暮らしの中で、頭に浮かぶのは怜のことばかり…。そんな母と子が、長野の国立天文台で束の間の親子の時間を過ごす。そこで目にした天体が、二人の胸にもたらしたことはー。
三十代後半の悠子はアルバイトをしながら原稿を書く駆け出しの作家。仙台を出て東京でひとり暮らしを続けるが、ぎりぎりの生活を送る。そんな彼女の日常は、震災を境に激変した。非常時だとはしゃぐ同僚、思わぬ人からの気遣い、そして故郷の家族の変化。「私は、なぜこんなにもちっぽけなんだろう」過去と未来を見つめた、悠子の変化と決断は。
就職活動で全敗し、家業のおむすび屋を手伝うことになった結。実家の商売に子供の頃からコンプレックスを抱いてきた結だが、おむすび作りに実直に向き合う両親の姿を目の当たりにし、気持ちに変化が訪れる。「結」という名前に込められた、亡き祖母の想いも前途を温かく照らしだすー。一人の青年の新たな出発を描いた成長物語。
学生時代の恋人と二人で歩く夜に、祖父と同居しはじめた春休みに、2021年の皆既月食に、時をつなぐ邂逅に、音信不通だった母親と巡りあった日にー人気作家陣が紡ぐ東京の新たな“原風景”。切なく温かな涙がこぼれる5つの「再会」の物語。
高校生の広海は、祖父である大和尚の仕事を手伝っている。ある日、同級生のサチがお寺にやってきた。ふたりは次第に親しくなるが、彼女は母親との関係に苦しんでいてー東北の町を舞台に、人生につまずいてしまった人たちが再び歩き始める姿を描く、凛としたやさしい物語。
小学生の時に母を亡くした民子は、父とその再婚相手との三人暮らし。複雑な想いを胸に秘めていたが、亡き母の親友からある話を聞き、徐々に心を開いていくーそれぞれの想いを鮮やかに掬い取った、切なくも温かな家族の物語。第2回ポプラ社小説大賞優秀賞受賞作。