著者 : 荻史朗
元総会屋の武藤修治は、昔、面倒を見てやったことのある台湾人・曹東雲と組んで、ある男を誘拐した。成功すれば、五千万円の報酬ー。割のいい仕事だ。ところが、突然、正体不明の男たちの襲撃を受け、肝心の獲物が奪い去られてしまった。東京に戻り敵を探しはじめた武藤と曹だったが、逆にその周囲で不気味な影が蠢きはじめる。果たしてその正体はー。
元総会屋の武藤修治は、昔面倒を見てやったことのある台湾人の曹東雲と組んで、ある男を誘拐した。報酬五千万円という割りのいい仕事だった。ところがせっかく手に入れた獲物は、正体不明の男たちに横取りされた。武藤と曹は、曹の新宿の組織を使って、男たちの素性を洗う。しかし相手はなかなか尻尾を出さず、逆に凄まじい反撃を食らう。さらに、亡き妻の面影に似た武藤の恋人・亮子も、敵の組織に拉致されてしまった。痛めつけ痛めつけられ、殺し殺され、殺戮者の街・新宿に、忍び足の男たちが蠢く。拷問、裏切り、一筋の愛の旋律。
死臭ぷんぷんと漂うなかで引鉄が絞り込まれる。発射された銃弾は何処へ向かおうとするのか。これは戦慄のマンハント・ストーリーである。政界の腐敗。財界の欺瞞。暴力団新法の余波。そして、何よりも戦後復興史の裏の裏。狩るのはだれで、狩られるのは。売るのはどいつで、売られるのは。複雑に絡みあう魍魎たちの夜。拭い去ろうとしても消えない記憶。葬るべきはその全存在。
ジャパユキとなっていたオリビア・キハノが北海道の山中で焼死体で発見された。フィリピンの裏社会に君臨する神谷昭次はオリビアの確認に旭川へ向かうが、雪山で二発の銃弾の洗礼を受け、また、オリビア捜索の一カ月間に行く先々で地元の暴力団につけ狙われていたのだった。杳として行方の知れぬオリビアの足取りを追って旭川から網走へと向かうが、そこでも神谷は二人の暗殺者に襲われてしまう。九死に一生を得、狙われる理由が分からぬままフィリピンへ戻った神谷だったが、日本の企業戦士が企む恐るべき巨悪と組織の罠が待ち受けていた…。