著者 : 蒲原二郎
戦国時代、静岡の地は遠江・駿河・伊豆の三国に分かれ、名だたる武将たちがしのぎを削っていた。要衝には、敵の侵攻に備えて山城、平城、海城などが数多く築かれ、遺構は今もひっそりと各所に名残をとどめている。歴史小説界に新風を吹き込もうと創設された「操觚(そうこ)の会」のメンバー10人が今回、その県内の城にスポットを当てた。いずれも徳川、今川、北条、武田の軍勢が武門の意地と誇りを懸けて激突した舞台。各作家が1つずつ選んで、ユニークな人間模様を紡ぎ出したーー。全編書き下ろしの異色アンソロジー。 ・地図 ・年表 ・「時満つる城ー堀川城語り」(堀川城)芦辺拓 ・「梅花の鏡」(諏訪原城)永井紗耶子 ・「意地は曲がらず」(韮山城)谷津矢車 ・「紅椿」(曳馬城)坂井希久子 ・「残照」(蒲原城)蒲原二郎 ・「風啼きの海」(下田城)彩戸ゆめ ・「最後の城」(掛川城)杉山大二郎 ・「井川の血」(今川館)鈴木英治 ・「返り咲きの城」(山中城)早見俊 ・「老将」(高天神城)秋山香乃 ・あとがき
1615年、大坂夏の陣。真田信繁の傍らに、真紅の鎧を纏う若武者の姿があった。彼の名は佐助。摂津国の鳶田の集落から大坂の地へやってきた彼には、倒さなければならない仇敵がいたーかつて母親ら家族を徳川に惨殺された佐助は、ただひとり生き延び、貧しい集落に流れ着いたのだ。「真田丸」での鍛錬で、強さを身につけた佐助は、信繁とともに徳川との決戦に挑むが…。史実を丹念に紡いで描いた、新たなる真田戦記。
慶長十九年、摂津国鳶田の集落に、貧しくも逞しく生きる一人の少年がいた。佐助と名乗るその少年は、天涯孤独の身となり、流浪していたのを村の長吏によって引き取られたのだ。人々に蔑まれながらも、同じ歳の権太と支え合う生活に、僅かな安息を感じる佐助。だが、彼には討たねばならない敵があったー。佐助の決意に、集う仲間たち。そして大阪へと旅だった佐助は、ついに真田信繁と出会う。新機軸で大坂の陣を描く、著者初の長編歴史小説。