著者 : 蕗字歩
夜魔の騎士と死闘を繰り広げ、命がけでヴァイデルナッハを退けたアシュレとシオンは、来る再戦の時に向けて英気を養っていた。今こそ一致団結して人類の敵に立ち向かう時であったが、アシュレたちはノーマンから不穏な情報を伝えられることになる。騎士同士にしか通じぬ符丁で内通者が潜んでいるというのだ。迫り来る重大な脅威に打つ手を考えていたアシュレは、かつての婚約者、エクストラム法王庁の聖騎士:ジゼルテレジアの力を借りることを思いつく。しかしアシュレは今や法王庁から追われる立場。アシュレの身を案じるシオンは、仇敵であるジゼルテレジアの元へと独断で向かうのだがー。
法王庁の陰謀とヒトの運命をもねじ曲げる“ちから”の存在について知ったアシュレは、ともに戦った仲間とイリスを守るため、カテル島に身を寄せていた。数奇な運命に翻弄された旅路の傷と疲れを、シオンとイリスのふたりとともに隠れ家で癒やす日々。奇跡的な生還から、アシュレは本当の英雄への階段を昇り始めようとしていた。そんな中、イリスが体調を大きく崩した。その原因がイリスが懐胎した“ねがいの仔”にあることを、シオンは見抜いていた。イリスが宿した存在は、あの日、廃王国の底で降臨した「ヒトならざるなにか」なのだと。一刻の猶予も許されぬ状況に、アシュレは決断をしなければならなかった。いまイリスの胎内に宿るものを、この世界に出現させてしまってよいものかどうかー。
聖騎士:アシュレたち一行は、荒廃した王国をあとに青く輝く海の向こう、カテル島を目指していた。法王庁の追及を逃れるための逃避行。それは聖騎士の資格を失い、家門が取り潰されかねない苦渋の選択だった。それでも、信じた仲間たちのため、アシュレは一歩を踏み出す。だが、その直後、激戦の傷と疲れから意識を失い倒れ込んでしまう。そして、ふたたび目を覚ましたとき、そこに待ち受けていたのは想像を絶する光景だったー。
青年アシュレは、「聖遺物」の管理に励む若き聖騎士。ある夜、保管庫が襲撃され、ふたつの聖遺物が強奪されてしまう。それは美しき夜魔の姫シオンの犯行だった。アシュレはシオンを追跡するも、辿り着いた廃王国は人外魔境と化していた。そこで、幼なじみで従者でもあるユーニスと離れ離れになってしまう。窮地に追い込まれたアシュレが死を覚悟した瞬間、この事件の発端であるシオンと、土蜘蛛の男イズマに救い出される。一時的に共闘関係を結んだ三人は、ユーニスを救い出すべく行動を開始するのだがー。いま、若き英雄の旅立ちが始まる