著者 : 軒上泊
秋の柔らかな陽光に包まれた兵庫埠頭に、冬木健司は立った。「夜の走者」-この海で不審な死を遂げた親友が遺した言葉。風が、11年ぶりに再会した未奈子の髪を揺らし、遠い日の光景を運んでくる…。
ニューヨークでイエロー・キャブの運転手をしている元大リーガーのジョージ・ハイダーは突然神戸に呼び戻された。彼はこの街で黒人との混血として生れ育ち、5年前にはここをフランチャイズとするパ・リーグのチームで投げていた。そのチームで今季大活躍のアメリカ人投手の妻が誘拐され、それを捜し出すニワカ探偵がこんどの仕事だ。ジョージの妻惟子も失踪したままで、その姿をこの神戸で見かけたものがいる…。
800万の夢と哀しみ、愛と憎悪、そしてささやかな希望のミックス・カクテル。Sex&Drug&Violenceが交錯し、あらゆるものが揃う街、ニューヨーク。殺意がスウィングし、野望と絶望がブルースを奏でる。チンピラや娼婦、殺し屋、男娼、ポン引きたち-。大いなる夢とせつない優しさ…心にしみる9つの人生。
「行方不明になった19歳の留学生ベティを捜してほしい」-ブロンド美女のリタ・ターナーは、新宿のうらぶれた見上の事務所でそう告げた。リタに恋の兆しを感じた見上は、さっそく調査を開始した。が、唯一手掛かりであった男が惨死体で発見され、事件は意外な展開を見せはじめた。リタとのベッドまでの距離を測りつつ、調査を続行する見上の前に、やがて奇妙な宗教団体が浮かび上がった…。大好評『ニヒリズム・バーゲン』に続いて描くニュー・ハードボイルドの第二弾。
父が死んで、高校をやめた僕は左官見習として働いていた。姉も結婚できずに働いている。気丈だった母が、ノイローゼになり…。丘の上に新しい家を建てることを明るい希望にしていた僕は、無免許で事故を起し少年院へ(「手錠の一日」)。少年期から青年期へ、上手に飛べなかった若者の悲しみが、キラッと光る傑作青春小説集。