著者 : 近衛竜春
天下統一を後一歩で成し遂げようとする豊臣秀吉に対し、北条氏は鉄壁の小田原城を恃みに抗戦することに決定する。しかし、秀吉の威光の前にある城は降服し、ある城は落城し、北条氏は次第に追い詰められていく…。そんな圧倒的に不利な戦の中、城主の成田氏長が不在にもかかわらず、石田三成の猛攻を凌ぎ、屹然と聳え立つ小城があった。
平成の『魔界転生』ついに誕生!関ヶ原合戦を勝ち抜いた徳川家康は天下を束ねるため、兵法指南役・柳生宗矩に謎の連続惨殺事件の調査を命じていた。槍の名手といわれた高僧・宝蔵院胤栄の怪死、名医・秦宗巴の急病死、「洛中洛外図屏風」「酒伝童子絵巻」を著した大家・狩野家に伝わる戦慄の言い伝え、そして明智光秀の本能寺襲撃にも謎は広がり…。宗矩必死の探索の結果、おぼろげに見えた魔敵の恐るべき正体とは?危うし、宗矩!天下最強の魔敵に、柳生家秘伝の魔斬刀がうなる!!戦国を骨太に描いた書き下ろし本格伝奇時代小説。
上杉景虎との邂逅。直江兼続の胸中で懐かしさと苦さが交錯する。袂を分かって以来、景虎は兼続と彼の主である上杉景勝を恨み続けている。突然面会を申し入れてきたのには、何か裏があるというのか…。確か、景虎は会津征討へと北進する徳川勢の一角に名を連ねていたはず。「恨み骨髄の我らに何やらお話があるとか」年を経ても変わらない景虎の凛々しい目を、兼続は正面より見据えた。「内府が兵を退いておるぞ。早くせねば、三河狸が逃げおおせてしまうわ」久しぶりに聞いた景虎の第一声は、「またとない機会」を兼続に告げていた。(家康、逃げるでない。天下が欲しくば我らと一戦交えよ)兼続は逸る気持ちを目前の男に気づかれぬよう、両の拳を握り締めた。
「追え、者ども、逃がすでない。柴田の首はまだぞ!」「退くな、押しとどまれ。兵数では変わらぬぞ。柴田の闘志を見せい!」真上にあった日は、山々を茜色に染めながら長い影法師を作っている。天正六年(1578)三月三十日申の刻。朝の霧中で始まった上杉五万、織田六万による九頭龍川の戦いもそろそろ終盤を迎えつつあった。上杉勢の猛攻に敗走した織田勢はちりぢりに逃げまどい、大将柴田勝家は五層九重の天守を誇る牙城、北ノ庄に籠城すべく、無念の退却を決めた。「乱杭を打て、逆茂木をくくれ。火縄の火をたやすでない」煌々と篝火が焚かれる城内では上杉勢を迎え撃つ準備がなされていく。勝家は天守最上層から外の様子を眺めては、末期の酒を傾けていた。“越後の龍”こと、上杉謙信との決戦の時が目前に迫りつつある-。信長父子の必勝戦策-血戦、賤ヶ岳。