著者 : 野尻抱介
東北復興と科学振興のため、北上山地の地下への誘致をめざす国際リニアコライダー(ILC)。ILCとは、全長約30kmのトンネル内で電子と陽電子を衝突させてビッグバン状態を再現、宇宙の誕生や素粒子の起源について研究するための巨大加速器である。このILCが建設された近未来を舞台に、小川一水、柴田勝家、野尻抱介の3人のSF作家が、岩手と日本、物理学の新たなビジョンを紡ぐ書き下ろしアンソロジー。
女子高生の森田ゆかりは、16年前ハネムーン先で失踪した父親の消息を求めて、ソロモン諸島・アクシオ島を訪れた。そこで出会った「ソロモン宇宙協会」の所長、那須田と名乗る男は、父親捜しを手伝うかわりに、ゆかりを協会にスカウトする。そこには、軽量化を余儀なくされたロケット打ち上げのため、小柄で体重の軽いゆかりを飛行士に採用しようという協会の思惑があったのだが…。野尻宇宙開発SFの原点、ついに復刊。
アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。分析の結果、JAXAの野嶋と弥生はそれが恒星間測位システムの信号であり、異星人の探査機が地球に向かっていることを確信するー静かなるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、一人の女子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を収録。宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。
麻薬組織の追跡を振りきり、とある恒星系に逃げこんだミリガン運送のロイドとマージ、そして新任航法士の少女メイ。愛機の故障による窮地から3人を救ったのは、ガス惑星フェイダーリンクのリング上で暮らすコロニーの人々だった。しかし、星系政府が推進するフェイダーリンクの太陽化計画によって、彼らの居住地は消滅の危機を迎えていた。恩義に報いるため、ロイドらは一計を案ずるのだが…傑作ハードSF活劇第2弾。
社長のロイドに、女性パイロットのマージ、そして、かなりガタのきた恒星間宇宙船+シャトルのアルフェッカ号ーそれが銀河の零細企業・ミリガン運送のすべてだった。愛機の修理費を稼ぐため、惑星ヴェイスへと向かったロイドとマージ。だが、その軌道は『大戦』の負の遺産である機雷原に覆われていた。それを突破して地表へと降下するには、優秀なナビゲーターが不可欠だったが…傑作ハードSF活劇いよいよ開幕。
西暦2006年、突如として水星の地表から噴き上げられた鉱物資源は、やがて、太陽をとりまく直径8000万キロのリングを形成しはじめた。日照量の激減により破滅の危機に瀕する人類。いったい何者が、何の目的でリングを創造したのか?-異星文明への憧れと人類救済という使命の狭間で葛藤する科学者・白石亜紀は、宇宙艦ファランクスによる破壊ミッションへと旅立つが…。星雲賞・SFマガジン読者賞受賞の傑作短篇、待望の長篇化。