著者 : 高橋和島
美濃の野平藩では不作続きの上、江戸藩邸の維持費などが嵩み、財政が逼迫していた。末席家老の井戸一之助は窮状を脱しようと智恵を絞り、藩内で良質の土が採れることから、肥前焼のような高価な焼物業の振興を思いついた。だが、有田や伊万里の窯は厳重な管理下にあり、製法は門外不出である。そこで家老自らが雲水(修行僧)に身をやつし、肥前に潜入したが…。貧乏藩を救うために家老が僧侶に扮し、他藩で隠密に!?
徳川御三家でも筆頭格の尾張藩。だが、江戸中期、将軍継嗣争いで紀州に後れをとり、公方吉宗の絶対的な天下を許した。そんな中、藩主の座に就いた宗春は、倹約令を強行する幕府に反し、芝居の奨励、遊郭の認可など規制緩和政策をしき、魅力の乏しかった名古屋城下を活気溢れる街に変えた。中京の礎を築き、いまなお名君と讃えられる男の波瀾の生涯を描いた傑作!!
“秀吉天下取り”の一番槍。秀吉子飼いの桶屋の悴は、己の槍で50万石の大名となり関ケ原では東軍の先鋒を務めて家康にも可愛がられた…。二人の英雄に愛された男の魅力を描く歴史長編。侍になる夢を抱き続け、福島市兵衛の養子に入った桶屋の息子・市松の人生は木下藤吉郎に仕えたことで大きく転回した…世渡りが上手いわけではない。頭の回転が速いわけでもない。ただ、愚直なまでの勇猛さと、誇りの高さと己の腕で、激動の時代を生き抜いたのである。
凋落・明の援軍要請を受けた江戸幕府は鎖国令の中、苦肉の策として浪人数百人を鄭成功に差し向けることに-。日中混血の英雄がサムライとともにいよいよオランダから台湾を奪取。「朱帆」に続く、鄭成功一代記の後半生。
時は昭和2年。加藤唐九郎から借り受けた芝居の台本が、焼物原料業を瀬戸で営む加藤庄三の後の人生を変える。瀬戸の窯神・加藤民吉と九州に置き去りにしたとも伝わる現地妻との哀しい物語であった。民吉が新しい焼もの技術を九州で盗み出したという通説は違うのではないか。「第69回オール読物新人賞」「第12回小説CLUB新人賞」受賞作家である著者自らが、カルチャー・サスペンスと名付ける書下ろし最新作。