著者 : 高田在子
神田の一膳飯屋「喜楽屋」の女将・おせいの恩人である、根岸のご隠居が店を訪ねてきた。ご隠居は、友人の隠居所を建て替えてくれた大工たちを「喜楽屋」でねぎらいたいという。おせいとともに店で働くはなもまた、腕によりをかけて料理を振る舞うのだった。そんななか、大工の一人・希助は、自分を育ててくれた爺さんの又平に、「喜楽屋」の料理を食べさせたいというのだが…。はなは、又平が喜ぶような料理を作ることができるのか。恋と美味しさ溢れる、グルメ時代小説。
寺で貧しい子供たちに読み書きを教えている武井信頼が、教え子の秀介を伴い、はなの働く一膳飯屋「喜楽屋」を訪ねてきた。秀介は、御鷹匠を務める小泉の妾腹の子で、跡継ぎになるはずだったが、小泉の正妻も男児を産んだという。秀介は、冷静に武士の道を諦めるというが…。3日後、他の手習い子との諍いの末、秀介が失踪したとの知らせがー。傷ついた秀介の心を、はなの料理で癒やすことはできるのか。
桃の節句の前日、はなの働く一膳飯屋「喜楽屋」に、降りしきる雨のなかやってきた左吉とおゆう。何か思い詰めたような2人は、「卵ふわふわ」を目を潤ませて食べた後、礼を言いながら帰っていった。だが、2人の忘れ物に気づいたはなが追いかけると、そこには川に飛び込もうとする2人が…。はなが事情を聞くと、店を持つために貯めた金を騙し取られ、死ぬしかないという。(「握り雛」より)はなの料理で奇跡は起きるのか。
神田須田町にある一膳飯屋「喜楽屋」で働きながら失踪した夫を捜すはな。ある日、夫・良太の手がかりを求めて、常連客の卯太郎とともに永代寺門前町へ向う途中、苦しそうに難儀している武家娘に遭遇する。偶然にも、卯太郎の得意先の娘・詩織で、髪によい食べ物を探しているという。目当ての物が見つからなければ、許嫁と破談になると嘆く詩織に、はなは料理で助けてほしいと頼まれるがー。(「恋の願かけわかめ」より)
謎の失踪を遂げた夫の良太を追って、鎌倉から江戸にやってきたはな。だが、疲労と空腹のあまり日本橋で倒れてしまった彼女は、巾着を盗まれ、小石川養生所に運び込まれてしまう。失意のはなを見かねた御薬園同心の岡田弥一郎は、住み込みで働ける一膳飯屋「喜楽屋」を紹介するのだった。料理の腕を活かして、夫捜しを続ける覚悟を決めるはな。女将と客たちとも打ち解けた矢先「喜楽屋」である騒動が巻き起こり…。
植木奉行同心とは幕府ゆかりの地や寺社領の植木を見廻るのが務めだが、直心影流の達人・斎藤作左衛門は、その垣根を越えて江戸の悪と戦う。不器用な性格ゆえ、上役の姪・初音に好意を打ち明けられずにいたが、僚友・駿馬も恋心を抱いていた。彼ら三人に迫る波乱の予感!恋・友情・勇気!耐える男の切なくも愛に満ちた物語。