涅槃 上
血に束縛され、戦国史上最悪と呼ばれた男の素顔とは。豪商・阿部善定は、没落した宇喜多家一家を引き取る決意をする。幼い八郎の中に非凡さを見い出したが故である。やがて宇喜多家を再興し、荒れた備前南部に再びの安寧を与えてくれるのでは、と期待を寄せた。町家で育った八郎は孤独な内省の中で、商いの重要性に早くから気付く。武門の子でありながら、町や商人の暮らしに強く惹かれる。が、青年期に差し掛かる頃、町で出会った年上の女性・紗代と深く関わり合うことで、自身の血に流れる宿命を再確認する。-八郎は、やがて武将・宇喜多直家となる。
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涅槃 下涅槃 下
宇喜多家の存続のためには、どんなことでもする。親族はおろか我が死でさえも、交渉の切り札に使う。世間でいう武士道などは、犬にでも呉れてやる。直家は宇喜多家を再興し、石山城(岡山城)を国内商業の拠点と定める。同時に、近隣の浦上・三村と激しくつばぜり合いをくり返し、彼らの背後にいる巨大勢力の毛利・織田の狭間で、神経を磨り減らしながら戦い続ける。直家の生来の気弱さを知る、妻のお福。生涯の恩人となった商人・阿部善定。旧縁である黒田満隆と官兵衛の親子。直家が武士に取り立てた商人・小西行長…様々な人との関わりの中から、直家は世の理(ことわり)に気付いていく。-人の縁で、世は永劫に回り続けていく。 2021/09/17 発売