欅しぐれ
深川の老舗大店・桔梗屋のあるじ太兵衛と賭場の貸元・霊巌寺の猪之吉は偶然に出会う。ひとの目利きに厳しい太兵衛は、猪之吉の人柄を感じ取り、一献お付き合い願いたいと申し出た。大店のあるじと貸元の、肚をわった五分の付き合いが始まった。そんなある日、油問屋・鎌倉屋鉦左衛門による桔梗屋乗っ取りの企みが明らかになる。重い病を患う太兵衛は、桔梗屋の後見を猪之吉に託し、息を引き取る。やがて桔梗屋をめぐり、鎌倉屋の意を受けた乗っ取り屋一味と、猪之吉一党との知力と死力を尽くした闘いが始まるが…。直木賞作家の人情味あふれる時代長篇。