恋の川、春の町
駿河小島藩の年寄本役・倉橋寿平のもう一つの顔は、江戸で人気の戯作者・恋川春町であった。戯作者としての矜持は、黄表紙を通じお上を批判しながら、人々を楽しませること。そして探し求めるのは、共に世の中を遊べる“菩薩のような女”-。しかし、松平定信による娯楽の規制は厳しさを増してゆく。女たちと関わりながら、定信からの呼び出しを無視し続ける春町だが、盟友の朋誠堂喜三二は筆を折り、さらに江戸一の人気戯作者の座は若き山東京伝に奪われつつあった。悩みぬいた春町が辿り着く先は?武士ながら戯作者として人気を博した後、謎の死を遂げた恋川春町。六人の女を通して描く、その情けなくも愛おしい、不器用な生き様が胸に迫るー。