鬼談
藩の剣術指南役・桐生家に生まれた作之進には、右腕がない。元服の夜、父は厳かに言った。「お前の腕を斬ったのは儂だ」。一方、柔らかで幸福な家庭で暮らす“私”は何故か、弟を見ていると自分の中に真っ黒な何かが涌くのを感じていた。ある日、私は見てしまう。幼い弟の右腕を掴み、表情のない顔で見下ろす父を。過去と現在が奇妙に交錯する「鬼縁」ほか、情欲に囚われ“人と鬼”の狭間を漂う者たちを描いた、京極小説の神髄。
藩の剣術指南役・桐生家に生まれた作之進には、右腕がない。元服の夜、父は厳かに言った。「お前の腕を斬ったのは儂だ」。一方、柔らかで幸福な家庭で暮らす“私”は何故か、弟を見ていると自分の中に真っ黒な何かが涌くのを感じていた。ある日、私は見てしまう。幼い弟の右腕を掴み、表情のない顔で見下ろす父を。過去と現在が奇妙に交錯する「鬼縁」ほか、情欲に囚われ“人と鬼”の狭間を漂う者たちを描いた、京極小説の神髄。