乱歩殺人事件ーー「悪霊」ふたたび
あの中絶作を書き継ぎ完結させる!そして物語は更なる仕掛けへ…。江戸川乱歩が昭和8年に鳴り物入りで連載開始した「悪霊」は、傑作となるはずだった。謎めいた犯罪記録の手紙を著者らしき人物が手に入れ、そこで語られるのは、美しき未亡人が異様な血痕をまとった遺体で発見された密室殺人、現場で見つかった不可解な記号、怪しげな人物ばかりの降霊会の集い、そして「又一人美しい人が死ぬ」という予告…。期待満載で幕を開けたこの作品はしかし、乱歩の「作者としての無力を告白」した宣言で途絶した。本書は、乱歩がぶちあげた謎を全て解き明かすと同時に、なぜ「悪霊」が未完になったかに迫る超弩級ミステリである。