さよなら、君のいない海(1)
十八歳の冬、僕は失うことができるすべてのものを失った。両親、家、金、友情、すべてを。辿り着いた鎌倉の地。海岸を望む高台に移り住んだ僕は、その夏、白い入道雲が浮かぶ七里ヶ浜で三歳年上のミキと出会う。海沿いのレストラン、紫陽花の咲く小道、浜辺のビール、浴衣と線香花火、凪の夜ー。彼女と過ごす平穏で特別な日々は、やがて、台風の訪れとともにその表情を変えていく…。ミキが隠していた複雑な過去と、叔父が抱えた三億円の借金。そんなとき出会った謎の男“イヌ”が持ちかけてくる常夏の島ハワイでの危険な儲け話。僕は、すべてを取り戻すため、海を渡った。