ひび割れから漏れる
「私、雷に打たれたいんだよね」僕の隣で、千歳さんがそう呟いた。いつも制服の下にハイネックのシャツを着ている風変わりなクラスメイト。彼女に頼み込まれてこの夏、雷を“落とす”ための避雷針作りを手伝わされることに。何でもなかったはずの僕の日常が、彼女によって少しずつ彩られていく。きっと、千歳さんは何かを隠している。それでも千歳さんと一緒にいたくて、ずっとこんな日が続けばいいのにと思っていた。彼女の“ひび割れ”にも気づけないまま…。ゆっくりと進む恋と痛み。少年と少女が“心”を見つけるひと夏の物語。II Vクリエイターアワード“小説部門賞”受賞作。