彼岸過迄
大学を出たが職のあてのない敬太郎は友人須永の叔父、田口を頼る。「探偵」の仕事を請け負った彼はある人物の尾行を命じられる。その男、松本は田口の義弟で、須永と同様、高等遊民の暮らしをほしいままにしていた。都会の知識階級の自我をめぐる苦悩を、漱石自身に重ね合わせながら丹念に描き出す。生死の境を彷徨った「修善寺の大患」後の作品で、亡き娘、ひな子と親友、池辺三山の霊に捧げられた。
大学を出たが職のあてのない敬太郎は友人須永の叔父、田口を頼る。「探偵」の仕事を請け負った彼はある人物の尾行を命じられる。その男、松本は田口の義弟で、須永と同様、高等遊民の暮らしをほしいままにしていた。都会の知識階級の自我をめぐる苦悩を、漱石自身に重ね合わせながら丹念に描き出す。生死の境を彷徨った「修善寺の大患」後の作品で、亡き娘、ひな子と親友、池辺三山の霊に捧げられた。