徳川三代将軍家光の御前を退いてから十年、三十歳の十兵衛に新たな使命が待っていた。向かうは…日本諸州の乱れを未然に防いできた柳生家が、まだ手をつけていない場所だった。
白刃をもってせまる相手を切らずに制する兵法、柳生新陰流。剣法だけでなく、人の心も同じ。圧力を高めすぎれば、反発が起きるもの。十兵衛は全国を行脚しながら、千を超える浪人を直弟子として、この平和の剣を伝える。指南は微に入り細をうがち、兵法の理が明かされてゆく。その真の目的とは。一武芸者として、隠密として、徳川の忠臣として、そして人間として、十兵衛の生き様、苦悩を描く。 2009/09/25 発売