時の扉(上)
東京郊外で大学講師を務める矢口忍。その聴講生・卜部すえの、誠実で奥ゆかしく、はかなげなところに惹かれ恋仲になるが、すえとはまったく違うタイプの女性に心を奪われ、結婚してしまう。すえの「最後に、もう一度会いたい」という願いをにべもなく断った直後、すえが自殺ー。以来、矢口は北海道の寒村で中学校の教師になり、自分を罰するためにひたすら禁欲的な生活をしていた。しかし、友人の誘いで出掛けたシリアへの旅をきっかけに、矢口の心に変化が生まれ、止まっていた時間が少しずつ動き出すー。1976〜77年に「毎日新聞」に連載された、「愛とは何か」を鋭く、深く問う傑作長編小説の上巻。