桜島・狂い凧
「ねぇ、死ぬのね。どうやって死ぬの。よう。教えてよ。どんな死に方をするの」米軍上陸が迫るなか、桜島の海軍通信基地に異動になった村上兵曹は、一夜をともにした女性に、そう詰められる。しかし、どういう死に方をすればいいのか、そのときになってみなければわからない。ただ、死が目前に迫っていることをひしひしと感じるだけだった。生きることへの執着と諦観、どうせなら美しく死にたいという願望と、それはかなわないだろうという無力感…。背反する思いを抱えたまま散歩に出た村上に、グラマンの銃弾が降り注ぐー。出世作「桜島」に、戦地で自死同然に亡くなった弟の足跡を、双子の兄たちがたどっていく芸術選奨作「狂い凧」を併録。