浮草
食えない作家志望の青年との同棲生活を描く。「こう世間が不景気じや、あなたの勤口もあぶないもんだし、筆の方でちやんとやつて行ける自信だつて、ないんでしよう。-ね、家を持てないなら私と死んで頂戴!家を持つか、心中するか、どつちかにして頂戴よう!」いつまでたってもうだつの上がらない作家志望の青年・捨六と、浮気癖のある若い女給・時子。食い扶持を求めて小田原、名古屋、東京と転々とするものの、なかなかお金を稼げない捨六に、業を煮やした時子は心中してくれと懇願するがー。時子の独白で綴られる表題作に、久しぶりに再会した二人の一夜を描く後日談「別れた女」を併録。