天上の青(下)
連続殺人犯とクリスチャン女性の心の交流
身勝手な理屈で何人もの女性の命を奪ってきたシリアルキラー・宇野富士男。次なる標的が思うように定まらず、フラストレーションをためていたところに塾帰りの小学生がやってきて、富士男の車と接触。その子を車に連れ込んで絞殺し、遺体を竹やぶに放置して逃走したところ、自転車に乗っている人をはねてしまった。この交通事故をきっかけに、これまで富士男が重ねてきた殺人やレイプが白日の下にさらされる。
一方、「少しくらい、嘘つきでも、その場限りでも、それだから、って言って付き合わなかったら、私たち付き合う人なくなってしまうんだわ。第一、私自身がそうなのよ」という波多雪子は、世間から後ろ指をさされるリスクを冒しても、富士男の弁護士費用を肩代わりしようとする。
「同じ死刑になるのでも、それまでが、大切だと思うんです。見捨てられて死ぬのではいけないんです」という雪子の気持ちは、冷徹な殺人者に届くのかーー。
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大久保清事件をもとに書かれた名作の上巻 波多雪子の家の庭先に咲いていたヘヴンリー・ブルー(天上の青)という朝顔を見て、「きれいな青だなあ」といって近づいてきた宇野富士男。じつは三十過ぎだというのに定職を持たず、青果店を営む実家に寄生しながら気ままに生きている男だった。その後も時折訪ねてくるようになった富士男のことを、「いささかの不実の匂いのする男」だと感じながらも穏やかに受け入れる雪子は、富士男が他の女性と交わった話を聞いても動じるようなそぶりは見せない。しかし、「俺がもっと決定的にだめな人間だってわかった時、あんたは愛想を尽かすよ」という富士男は、連続殺人犯だった。 女子高生やデパート店員、書店の客など、誘いに乗りそうな女性に声をかけ、天才的ともいえる作り話で共感を誘って、最後は自分勝手な怒りを爆発させ殺してしまうーー。でも、凶行に及んだあとは、決まって雪子を思い出し、「一度でいいから膝枕さしてくれないかな。そうすると、とても安心できるような気がするんだ」と甘えたりする。はたしてこの奇妙な関係はいつまで続くのかーー。 1970年代に発生した連続殺人事件を下敷きに書かれた渾身の長篇。 2025/12/11 発売