情趣溢れる街並み、思わず息をひそめて見た美術館の絵画、ふとした出会い、大切なひととの思い出、自分を見つめ直した夜…。旅の情緒と、旅先の人間模様が、心温まる描写とともに美しく繰り広げられる七編の物語。
高校時代からの友人男子三人組がオランダを旅する中でフェルメールをめぐる互いの秘密に気づく「アムステルダムたち」。一人パリを訪れた女性が、亡き母の友人であるフランス人女性と再会し、彼女と母との意外な関係を知る「秋の休暇」。愛する妻を失い、その魂に誘われるまま南へと進路をとりスペインを旅する「南へ…!」。ほかに、チューリッヒ、プラハ、ヴェネツィア、ハワイへと舞台を移し、異国の地で繰り広げられる人間ドラマと旅人の心の変化を描く珠玉の全七編。美術、映画に造詣の深い筆者ならではの細部に渡る巧みな描写も魅力。 2014/07/08 発売