ふたつの家族、三人の母と、三人の子。生きることは哀しく、魂はひりひりと泣いていた。魂が涙する家族小説の名作。
昭和三十年七月。夏休みのある朝、小学四年生の広之は大阪から夜逃げしてきた家の子・勝治と出会った。無邪気な少年同士の友情は、親たちの抱える複雑な情と事情に流されて、ひりひりとした痛みを帯びていく。ひと夏の体験とかつて荒くれ者だった父が酔って語る“魂の話”は、広之の心に何を刻むのかー戦争の傷跡残る和歌山を舞台に、ふたりの少年の出会いと友情、そして別れを軸に、大人たちの人情の機微と愛情を情感こめて綴った、ふたつの家族の物語。 2008/03/11 発売