「雪国」殺人事件(小学館文庫)
「君は、自分で思っている以上に、人がいいんだ」十津川警部は、かつての部下で今は私立探偵である橋本豊の身を案じて、そう伝えた。彼は越後湯沢で川端康成の名作『雪国』のヒロインに名ぞらえて選ばれた“ミス駒子”こと芸者菊乃の身元調査を請け負い、事件に巻き込まれていった。十年ぶりに故郷・湯沢に舞い戻った菊乃の実父が殺された…。揺れ動く菊乃の心中を察し思いを募らせていく橋本は「あなたは優柔不断よ。私と一緒に死ぬこともできないくせに」となじられながらも、愛憎が渦巻く事件の糸にからめとられていく…。