月をさすゆび
藤井善行、三十二歳。独身。売れないカメラマン。高校時代は、かなり悪かった。跡継ぎのいない叔父の寺を存続させるため、というのは建前で、叔母の「儲かる副業」の言葉に釣られ、仏教学院に入学する。試験は、面接のみ。たったひとつだけのクラスは、下は十代から上は六十代まで老若男女バラエティに富んだ構成だ。中には、東大のインド哲学科卒のインテリまでいる。一年限定とはいえ、久しぶりの学生生活がはじまった。今まで接することもなかった属性のクラスメイト達と交流するうちに、善行は仏教に対して前向きになっていくのだった。仏教が紡ぐ青春の物語。