ルドヴィカがいる
小説家の伊豆浜亮平はヒット作にめぐまれず、フリーライターとして雑誌に記事を書いて生計を立てている。ただ、文章や言葉づかいに関しては人一倍鋭い感性を持っていた。そんな小説家が、世界的ピアニストへの取材をきっかけに遭遇したのは、不思議な話法で言葉を操る謎の女性だった。「社宅にヒきに行っている人とその恋人の方ですね。ラクゴはミています」-彼女の言葉にどんな意味があるのか、なぜこんな話し方をするのか。言葉の迷宮をさまよう小説家は、やがて執筆中の作品にも通底した“もうひとつの現実”へと導かれてゆく。物語の異境を体感する超感覚小説。