いつの日も泉は湧いている
六年ぶりに連絡をとった真生子は、ニューヨークでの生活を引き払い帰国したばかりだった。中南米を舞台に写真を撮り続けてきた彼女だったが、東日本大震災が起きると、旧交を暖める間も無く現地に飛んだ。九か月にわたる取材成果を披露する会場に現れた彼女はすっかり痩せて、人生の重大な局面に立たされていることを感じさせるのだった。真生子とは、いまから四十年以上も前、高校生の時に出会った。当時学生運動の波は高校にまで押し寄せてきており、彼女は市内の女子高に通う一学年上の活動家だった。そして、十五歳のぼくは、彼女に淡い恋心を抱いていた。