横濱王
昭和十三年。青年実業家の瀬田修司は、横濱一の大富豪から出資を得ようと原三溪について調べ始める。三溪は富岡製糸場のオーナーで、世界最高ランクの生糸を生産していた。関東大震災では横濱復興の先頭に立ち、私財を抛って被災者の救済にあたった。茶の湯に通じ、三溪園を作り市民に無料解放。日本画の新進画家を育成…と、身辺を嗅ぎ回っても醜聞は見つからず、瀬田は苛立つ。やがて、三溪と話を交わす機会を得た瀬田は少しずつ考えを変えていく。少年時代の瀬田には、三溪との忘れ得ぬ出来事があった。現代にも求められるリーダー像を描いた長編小説。