遙かなる城沼
館林藩士である村瀬家の長男惣一郎は、秀才の弟、剣の才を持つ妹と塾や道場に通うのが苦痛になっていた。兄としてふがいない思いになるのだ。父は「頭が良い者だけが優れているわけではない。人は良い心がけで成長していくものではないか」と話してくれた。惣一郎の成長とともに、周りではさまざまな出来事が起きる。友の離反、父の病、筆頭家老の殺害、館林から浜田への国替えー。歳月を経ても、思い出すのは故郷・城沼の風景だった。風が渡り煌めく湖面、咲き誇る躑躅。そして昔の友から悲痛な叫びをあげる手紙が届く。人の絆の大切さを描いた青春時代小説。