恋をし恋ひば かんなり草紙
両親を亡くし家の財産も奪われた大納言の娘・沙羅。縁談もなかったことにされ路頭に迷いかけるが、女房として内裏に入り、今は幸せだった頃をときおり思い出しながら静かな日々を過ごしている。ある日の夜、ひとり庭をながめていた沙羅の前に宿直装束姿の男が現れる。親しげな様子で話しかけてくる男は藤原朝蔭と名乗るが、それは忘れたくても忘れられない、かつての許婚の名前だった。運命に翻弄され裏切られ、すべてを諦めて生きてきた沙羅だが、ゆっくりと朝蔭に心を開くように。だが、右大臣家の姫君と朝蔭の縁談が調ったという噂を耳にしてー。