移動動物園
『海炭市叙景』で奇跡的な復活を果たした悲運の作家、佐藤泰志のデビュー作を文庫化。山羊、栗鼠、兎、アヒル、モルモット…。バスに動物たちを乗せ、幼稚園を巡回する「移動動物園」。スタッフは三十五歳の園長、二十歳の達夫、達夫の三つ上の道子。「恋ヶ窪」の暑い夏の中で、達夫は動物たちに囲まれて働き、渇き、欲望する。青春の熱さと虚無感をみずみずしく描く表題作。他に、マンション管理人の青年と、そこに住むエジプト人家族の交流を描く「空の青み」、機械梱包工場に働く青年の労働と恋愛を活写した「水晶の腕」を収録。作者が最も得意とした「青春労働小説」集。