武士への執着を捨て、愛への未練を断ち、一輪の花に人生を託して漂泊のうちに生花未生流を興した一甫・山村山碩の求道行脚の生涯。
あたりを払って誇り高く咲くキレンゲショウマ。「私はこの花に会うため、お山さんに来たのではないか」珠子は心打たれた。吉野川沿いの養護施設で育った珠子は、十五歳で霊峰・剣山にある神社の神官の養女となる。清澄な自然を背景に、無垢な魂を持ち続ける少女の成長と恋を描き、新鮮な感動を呼ぶ長編。 2000/09/25 発売