四十年ぶりに懐しい土地を旅した男は、あの日と同じ風景の中にいた。月光に照らされた一夜の宴。十四歳の恋の無惨な記憶-怖しい愛のメルヘン。
しーちゃんは町の大きな家の娘で、二十歳を過ぎているけれど静かに狂っていた。十四歳の私は、赤い椿のようにきれいなしーちゃんが大好きだった。でもしーちゃんは、好きだと言われれば誰にでも喜んで体を開く。だからある夜、私もしーちゃんの熱い脚の間で望みを果たした。しーちゃんは次の夏、狂ったまま死んでしまったー。胸の奥底に残る甘くせつなく恐ろしい恋の記憶の物語。 1998/12/01 発売