あけめやみとじめやみ
水上庵の巫女はまだ幼ない。妃の病いを癒してもらおうと辺境の地までたずねてきた年老いた木莵王イヨギは、疑った。はたして、この幼女に妻を救うことができるのだろうか。だが、子供でも巫女は巫女。しかも、最高位の〈聖なる眼の巫女〉である。妃を救うことは道にそむくこと、とはじめは拒絶していた巫女も、王の悲嘆にくれる姿を見て、治療をはじめたが…。人を疑うことしか知らぬ老王が真の愛に目醒める「あけめやみとじめやみ」、愛する相手に対して、ふと不安をいだきはじめる少女の微妙な心の動きをつたえる「紙の舟」など6篇を収録。