引き潮のとき(第5巻)
行政エリート職の司政官を描き惑星世界そのものを描くライフワーク最終巻。急速に進行する深刻なインフレ、原住種族プバオヌの自主権の承認、惑星上のあちこちで起こる争乱タトラデンの植民者たちは司政官キタの施策を時代錯誤と非難しはじめる。無能の司政官呼ばわり、結構だ、とキタは思う。愚直なまでに司政原則を遵守する司政官を演じつつタトラデンを相剋の世界に持ってきているのだから、そんなことははじめから覚悟の上だった。目的を達成するため、司政官は私情を殺して職務を遂行する。
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人類が宇宙に進出し、居住可能な惑星に植民するとして、どんな状況が現出するのであろうか。植民世界がしだいに建設されるとき、教育と訓練を受けた司政官と呼ばれる人間が、理屈の上では公平無私のロボット官僚たちを駆使して、その植民世界を統治するかもしれない。-司政官シリーズは、この一見統一されたかたちの中での司政官を描こうとするうちに生まれた。が…少し考えれば自明のように、それは連邦と植民世界、植民者と現住種族との間に立つ、矛盾した存在である。『引き潮のとき』は、その矛盾のうちに連邦から自己の世界を混乱に導く使命を与えられて赴任し、しかも司政官制度退潮の中でおのが何をし、どうあるべきかを追られなければならなかった男の物語というわけなのだ。社会と個人の関係に、透徹した視線を向け続ける著者のライフワーク。待望の第1巻。 1988/03/01 発売