人魚姫の椅子
瀬戸内海に面した椅子作りがさかんな町、宝松市鈴香瀬町。高校生の海野杏は、毎朝海辺で小説を書きながら、椅子職人を目指す同級生・五十鈴彗斗と少しだけ話すことを日課としていた。そんなある日の朝、彗斗から「高校をやめて町を出る」と告げられる。特別仲がよかったわけではないが、傍にいて当然の存在がいなくなることに焦りを覚える杏。時を同じくして、杏は親友の翠からラヴレターの代筆を頼まれる。必死に頼む姿にほだされ、明るくてかわいい翠を思い浮かべながら、一文一文を丁寧に綴っていく。そのラヴレターから、小さな町を揺るがす失踪事件が始まるとも知らずに。“黒猫シリーズ”の著者が描く、新たな青春ミステリ。