随唐陽炎賦
賭博場に似た熱気とともに歯切れよい英語が飛びかってオークションが進行している。「次は…」黒漆に金で鳥獣、唐草、花雲を散らした鞘と把頭・鐺には碧瑠璃や緑瑠璃が嵌まった刀剣だった。おそらく隋唐の皇帝の佩刀であろう。激しい競りのあと、遂にそれを手にしたのは若き香港富王ビンセント・青だった。小切手を切りロールスロイスに乗ると、ビクトリアピークの斜面を滑昇してゆく。「あのときは、まだこれも輝いて…」古剣の感触を確かめるビンセントの意識は、千四百年の歴史を遡りはじめた。戦乱の隋唐に翔く傑作。
賭博場に似た熱気とともに歯切れよい英語が飛びかってオークションが進行している。「次は…」黒漆に金で鳥獣、唐草、花雲を散らした鞘と把頭・鐺には碧瑠璃や緑瑠璃が嵌まった刀剣だった。おそらく隋唐の皇帝の佩刀であろう。激しい競りのあと、遂にそれを手にしたのは若き香港富王ビンセント・青だった。小切手を切りロールスロイスに乗ると、ビクトリアピークの斜面を滑昇してゆく。「あのときは、まだこれも輝いて…」古剣の感触を確かめるビンセントの意識は、千四百年の歴史を遡りはじめた。戦乱の隋唐に翔く傑作。