大樹の下に
大正三年の夏、誠吾は旅芸人の食客だった父につれられ東北の小さな町、岩井へやって来た。父を失ってからは町の俥屋「徳茂」で人力車をひきながら、たったひとりの妹と手に手をとって生きてきた。芝居小屋の脇に聳える相生の槇の巨木が、いつもふたりを見守るように梢を揺らしている…。遠くに軍靴の足音が聞こえはじめた昭和初年。平穏だったこの町にも、物騒な事件の波が押し寄せて来た…。素朴な日々の暮らしに息ずく温かい心の交歓を、郷愁豊かに綴る長篇小説。
大正三年の夏、誠吾は旅芸人の食客だった父につれられ東北の小さな町、岩井へやって来た。父を失ってからは町の俥屋「徳茂」で人力車をひきながら、たったひとりの妹と手に手をとって生きてきた。芝居小屋の脇に聳える相生の槇の巨木が、いつもふたりを見守るように梢を揺らしている…。遠くに軍靴の足音が聞こえはじめた昭和初年。平穏だったこの町にも、物騒な事件の波が押し寄せて来た…。素朴な日々の暮らしに息ずく温かい心の交歓を、郷愁豊かに綴る長篇小説。