乱丸(下)
永年の宿敵だった本願寺をくだし、朝廷さえ足下におき、天下布武の大望を果たす目前まできた信長。だが、心のうちは孤独だった。長く信長に仕える武将たちはおろか、もっとも身近な近習でさえ信長を恐れ、惑う。ただひとり乱丸のみが、「魔王の子」としてひそやかに信長と父子の絆を交わしていた。やがて乱丸は、光秀の心に兆した翳りに気づき、探りはじめる。すると、乱丸の心を揺らす者が現れた。女郎屋を営む謎のキリシタン女性・アンナ。主君への忠誠とアンナへの想いは秤にかけるものではないはずだったが…。運命の日の朝。乱丸は自らの想いを問われることになる。