紫の鯉
まっすぐに、一人生きる。
世間とのいくさに挑み続けた
女の澄みやかなる矜持は、
どれほどの時を経てもただただ眩い。
澤田瞳子さん(作家)
“ニコポン”宰相、
桂太郎の愛妾「お鯉」の
左褄を取る芸妓から墨染め衣を纏うまでを
色鮮やかに描き切った。
明治女の気風に惚れる。
東えりかさん(書評家)
【著者からのコメント】
「私は首相の愛人でした。それ以前には、
梨園の妻だった時期もあります」
--今もし、こんな言葉を掲げて何かを
語ろうとする女がいたら、
まして、その人が政界を揺るがす
疑獄事件の法廷に立ったら、
きっと大変なことになるだろうと思います。
存在を否定されるかもしれません。
でもその人は確かにいました。
女として、人として、揺れ動く心を持って、
明治・大正・昭和を生きたのです。
彼女の言葉を蘇らせたい。
本音を探り、語らせたい。その一心で、
この物語を書きました。
多くの人に届けば、うれしく思います。
【あらすじ】
「お鯉を殺せーっ!」
東京一の名妓と謳われ、大物政治家、
歌舞伎俳優から愛されていた新橋芸者・お鯉。
梨園、角界、花柳界で生きてきたお鯉は、
山県有朋の計らいで首相・桂太郎の妾となり、
怒涛の人生を送る。
日露戦争の真っただ中、
病身の本妻に代わり桂を支え続けるも、
お鯉に世間の風当たりは強い。
そんな時、日比谷焼討事件が起こり、
認知されていない二人の娘が
桂にいることがわかりーー。
明治大正昭和と激動の時代を生き抜いた
お鯉の物語。