愛されて候
相思相愛の日比野左内と茜姫であったが、二人はまだ男女の仲に至っていない。父殺しの汚名を着せられて出奔した兄を見つけ出し、その潔白を証明するまでは、誰とも深い仲にはなるまい。左内は、そう心に決めているのだ。二人が甘く切ないすれ違いをした夜、左内の前に弊衣の浪人者が現れた。その人物こそ、日比野博之進、三十四歳。長く行方知れずとなっていた、腹違いの兄であった。
相思相愛の日比野左内と茜姫であったが、二人はまだ男女の仲に至っていない。父殺しの汚名を着せられて出奔した兄を見つけ出し、その潔白を証明するまでは、誰とも深い仲にはなるまい。左内は、そう心に決めているのだ。二人が甘く切ないすれ違いをした夜、左内の前に弊衣の浪人者が現れた。その人物こそ、日比野博之進、三十四歳。長く行方知れずとなっていた、腹違いの兄であった。